文章を「見せる」ということ
文章主体の展示はある
絵画や写真と違い、文章を見せるという展示はなかなか難しいものですが、決してないわけではありません。
僕が知ってるだけでもいくつかありますし、知らないものに至っては数限りなくあるのだと思います。
これらはだいたい次のうちのどれかに当てはまります。
- 作品がメディア展開しているものの展示
- 作家個人に焦点を当てた展示
- 超有名作品を主題にした展示
- 文章ではなく文章の形にスポットを当てた展示
そんなに詳しいわけではありませんが、それぞれ少し解説してみたいと思います。
作品がメディア展開しているものの展示
一番わかりやすいのは映像化されている文章の展示です。絵本もここに含まれます。
「ムーミン展」とか「化物語展(正式には「MADOGATARI展」)」とかのイメージです。
ただし、この展示の場合、文章そのものにスポットが当たることはあまりありません。あったとしても「原本」や「生原稿」の展示が少しだけあるのがほとんどです。
大抵はやはり写真や絵画、イラストなどが飾られます。
作家個人に焦点を当てた展示
世の中にある「文学館」で行なわれている展示の多くがこれです。
「太宰治展」とか「三島由紀夫展」などと銘打って、作家の生い立ちや生原稿、初版本、手紙、遺品などが飾れています。
昨年、神奈川近代文学館で行なわれていた「寺山修司展」では、芝居のチラシやポスターなども展示されていました。
このケースの場合、作家の知名度が物を言います。
超有名作品を主題にした展示
あまり見かけないタイプの展示ですが、あることはあります。
典型的なのは「聖書」を主題にした展示でしょう。さすがに「聖書展」とは名づけないと思いますが、宗教画ばかりを集めた展示はあります。
また、僕は不勉強で知りませんが「走れメロス展」とか「源氏物語展」とかは普通にありそうです。
文章ではなく文章の形にスポットを当てた展示
よく行なわれている「書道展」がそうです。あれは書かれている内容というより、書の形を「芸術」と捉えて展示しています。禅画などはまさにその一例でしょう。
タイポグラフィも同様と考えていいと思います。さまざまなフォントで綴られた文字を展示する会も存在します。
(タイポグラフィに関しては年鑑が毎年やっている展示があるのでリンクを貼っておきます)
その他の可能性はないのだろうか?
では、その他に文章を「見せる」展示はできないものなのでしょうか。
これに対して僕は「できる」と答えたいです。
実際、今でも時々やっているイチハラヒロコさんの展示なんかはそのひとつだと思います。
(6月1日より豊田市美術館で常設されるそうなのでリンク貼っておきます)
ただ、この人の場合は「コピーとタイポグラフィを合わせた展示」という印象が強いので、文章そのものの展示とまでは言えないかもしれません。
同じく実験的な試みですが、今年の3月まで横浜美術館で最果タヒさんが「最果タヒ 詩の展示」という展示を行っていました。
これはいままでになかったタイプの文章を見せる展示だと思います。
ってことで実験的かつ挑戦的に展示をしようってわけです
「さよならオフィーリア展」は新しい形の「文章を見せる」展示です。
かなり実験的ですし、新たな試みにもなると思っています。
コピー的に書くなら、
無名の作家が書いた一本の小説。
そこから6人のアーティストたちがイメージした世界。
ここにあるのは彼らの写真や絵、そして小説の断片だけだ。
そこにあなたはどんな小説を見るだろう?
とかなるんでしょうか。
ちょっとメタフィクションっぽくていいですよね。
でも、実際はその小説、会場で購入できます。
メタじゃなくてごめんなさい。
この新しい試みが成功するかどうかはわかりません。
面白いかどうかすらいまの段階では判断がつきません。
ただ、楽しい試みにしたいとは思っています。
気になったら、ぜひ、遊びに来てください。