3巻以内で完結するおすすめマンガ
一冊で完結するすごいマンガはすでに紹介したので、今回は3巻以内で完結する面白いマンガをご案内します。
すべて2冊~3冊で完結しています。どれも自信を持ってご紹介できる作品ばかりですので、気になった方はぜひ読んでみてもらえるとうれしいです。
『兎が二匹』(山うた)全2巻
死ねない少女の過酷すぎる運命
永遠の命を持ってしまったすずが、恋人や友人との関係に悩み生きる物語。
絶対に死ねないという設定があまりにも残酷。仲良くなった人たちが、自分を置いて次々と死んでいくとしたら、自分はどうするだろうか。と、思わず考えてしまう。
読みやすく親しみやすい「火の鳥」という感じも。一巻からかなり衝撃的な物語展開をします。
二巻の絶望感がすさまじいです。広島の悲劇が胸にズキンときます。号泣必至です
『銀河の死なない子供たちへ』(施川ユウキ)全2巻
未来を選んだ子供たちそれぞれの選択
人類が死滅した星で元気に生きる永遠の命を持った少年少女が、命ある少女と出会ったことで自らの生き方を考えはじめるお話。
奇しくもこちらも永遠の命の話。ですが、こちらはわりと能天気で、気楽に暮らしています。それでも、命と向き合わなければならない時は来て、その時に選ぶ生き方が壮絶。かわいらしい絵柄からは想像もつかないほどの、壮大な話が展開します。
ラストの重さは最初からは想像がつかない。終末論的な話としてもおススメ
『千年万年りんごの子』(田中相)全3巻
ホラー的な要素もある現代のおとぎ話
村のタブーを破ってしまったことで、ある悲劇に見舞われる若夫婦の話。
昔から脈々と続く村の禁忌という設定がまず目を引く。さらに、そこから展開していく話がいかにも土着的で、かつ夫婦の愛を感じさせるもので、ぶっちゃけむちゃくちゃ泣かされる。やや少女漫画的な絵柄だが、絵も素直に上手い。かなりグッときます。
もしかしたらあるかも…と思わせる話が切なくて上手い
『子供はわかってあげない』(田島列島)全2巻
背伸びした子供たちの世界観がそのままマンガに
田島列島が描くある問題を抱えた子供たちのひと夏の物語。
離婚や新興宗教など、大人のえぐい話も入っているのに、どこか子供目線で捉えられる世界が、懐かしくやさしく楽しい。ボーイ・ミーツ・ガールの要素もあり、夏休みの要素もあり、その点でも少年的。読み終わってなんかほわっとした温かい気分になります。
田島列島の世界観としか言いようのない世界がたまらない
『僚平新事情』(六田登)全2巻
夢だけでは食べていけない厳しい画家の世界
六田登が描くある青年画家の苦悩と葛藤の日々。
ヤクザに美術を教えなければならなくなった美大生の話で、基本的にはとてもコミカル。なのに、ところどころに出てくるヤクザの死生観や、画家としての矜持などが、妙に胸に迫る。特に最後の一編は秀逸。笑って泣いて、最後には頑張ろうと思える作品。
かなりふざけた調子のマンガなのに読み終わるとグッときます
『夜さん』(佐原ミズ)全2巻
地味に心にずきずきくる現代のファンタジー
臨時の美術教師として田舎にやってきた夜さんと中学生の晨くんとの不思議な日常を描いた物語。
夜さんと書いて「いつやさん」と読みます。「世にも奇妙な物語」にでも出てきそうな、かなりファンタジックな話なのですが、その反面、やけにリアリティがあり、不思議とどんどんと引き込まれます。最後の展開は思わず唸ってしまうほどにすごい。2巻で終わってしまうのがもったいない話です。
衝撃のラストと言ってもいいかと。でも納得できるし、満足もいきます
『コドモのコドモ』(さそうあきら)全3巻
小学生たちが挑む大人に内緒の出産
さそうあきらが小学生の妊娠・出産をテーマに描いた子供たちの冒険の物語。
小学生の出産というかなり過激な問題を扱いつつも、内容はいたって真面目。妊娠を知ってしまった少女と、彼女を応援するクラスメートたちが、一致団結して出産に挑んでいく様子は感動的です。彼女をめぐる大人たちのやり取りもかなりリアルで、いろいろと考えさせられるのも面白い。後日談もお見事。
映画にもなりましたが、原作のほうが圧倒的に面白いです
『アイシテル─海容─』(伊藤実)全2巻
7歳の幼な子を殺した犯人は11歳の少年だった…
少年が少年を殺すというセンセーショナルな題材を細部まで丁寧に描き切ったマンガ。
まるでノンフィクションなんじゃないかって思うぐらいに、少年や彼らの周りの人間の様子を徹底的かつ深くえぐって描いているのが印象的。少年の動機とは何だったのか、どんな状況が彼を追い込んだのか、彼らは事件を抱えてどうやって生きていくのか。様々な視点で描かれる物語は、深く心に何かを刻む。絶対に読んでおきたい一冊。
ものすごくせつなくなって、たまらなくなって、きっと泣きます
『アイシテル─絆─』(伊藤実)全2巻
殺人の罪を背負って生きる業
『アイシテル─海容─』のその後の物語。
殺人犯だった少年の弟の目を通して語られる、兄のその後は、あまりにも残酷で過酷でいたたまれない。でも、これが殺人という罪の重さなのだ、とも思わされてとても複雑な気分になる。前作よりももっと社会派色が強い印象。ぜひ前作を読んでから、こちらを読んでもらいたい。
加害者家族はどこまで罪を背負わされるのか。難しい問題を考えさせられる作品
『スター・レッド』(萩尾望都)全3巻
巨匠・萩尾望都が描くSFロマンス
火星をめぐる未来人たちの話。超能力、宇宙旅行、謎の火星人、いかれた科学者と、これでもかというぐらいSF的な要素が詰め込まれていて圧倒させられる。たった3巻しかないというのが嘘だと思えるぐらいに、内容はとんでもなく壮大。しかも、その物語がちゃんとまとまって最後に着地するのがすごい。読み応え満点です。
3巻で完結してみせるSF大河と言っても過言ではない
『さくらの唄』(安達哲)全3巻
エロと情熱が入り混じったむき出しの青春
美大を目指す高校生の過酷な運命と性生活を描いた安達哲の問題作。
秘めた恋心や鬱々とした欲望など、思春期の陰の部分をそこはかとなく描いてる前半から一変、後半はほとんどが自意識とエロの話になる。特にエロの度合いはすさまじく、描写もとんでもなく過激に。原作は3巻が成人指定にされてしまったほどだ。
とはいえ、この作品には必要性のあったエロで、浮いていると感じる個所はない。エロ込みでこその思春期そのもので、抜群に面白い。(原作は絶版。現在手に入るのは復刻版の上下巻)
エロ本顔負けのとんでもないエロさがヤバイ
『I am マッコイ』(小林まこと)全3巻
文句なしにただただ笑えるだけの名作
「ホワッツマイケル」や「柔道部物語」などの小林まことが描く、ぶっ飛んだ不良少年・松恋のめちゃくちゃな日常。
物語とか設定とか、すべてがもうどうでもよく適当で、なのにひたすら笑えるギャグ漫画の大傑作。下ネタとかもやたらあるのだけれど、微妙なラインで下品にならず、かといって上品でもなくいい感じで攻めてくる。最高にバカバカしくて爽快。
考える必要は何もない。ただ笑えばいい
『Endroll』(大野ユカ)全2巻
明日を求めてやまない闇を抱えた高校生の姿
家族を殺した叔父にカメラを託された高校生が、壮絶ないじめで不登校になっている女の子の映画を撮ろうとする話。
息を呑むっていうのはこういうことなんだと思う。このマンガのどこにもほっとできるところはない。頭から最後までとにかく徹底的に暗く重い。しかもその重さが読み進めば進むほど、どんどんと募っていく感じ。強い心持ちの時でないと、本気で心が折れそうになります。でも、それでも生きる、というラストは素敵です。
ひたすらエグイので覚悟して読んでください
『トーチソング・エコロジー』(いくえみ綾)全3巻
僕の前に現れた幽霊はリアルで温かかった
売れない役者がある日、幽霊を見つけてしまい、その幽霊と日常を過ごすようになる話。
自分にしか幽霊が見えない、という設定が絶妙。主人公は幽霊にも気を使い、その場をまとめようとするのだが、その様子もかわいらしくておかしい。また、途中から幽霊が姿を変える展開には感心した。作者は日常を描きつつ、テンポよく話を進めるのが上手い。あまり少女漫画っぽくない絵柄なので、男性でも気軽に気持ちよく読めると思う。それでいて読み終わると、心に重く残る何かが確かにある。すごいマンガだ。
BLっぽい表紙に騙されないように。結構、心に来る人間ドラマです
『さよならソルシエ』(穂積)全2巻
知られざる天才画家・ゴッホの真実
上流階級にしか解放されない美術の世界に嫌気がさしたパリの画商であるテオが、さまざまな手を尽くして美術を民衆の物にしようと企む話。
歴史に疎いので、これが当時をリアルに描いたものなのかどうかはよくわからなかったけど、説得力は充分にあった。知恵とコネを活かして、美術界に旋風を巻き起こしていくテオの手腕は、読んでいてスカッとするほど心地いい。切なさを感じさせるラストもお見事。ゴッホについて知りたい人には特におススメします(真実ではないけれど)。
NHKあたりがドラマ化したらいい思うほど、勉強になります。
3巻ぐらいだとわりと簡単に読めるので、気になったマンガがあれば挑戦してみてくれるとうれしいです。
じつは好きなマンガの大半が4巻完結で、ここでは紹介できませんでした。
悔しいので、今度は4巻モノで記事を書こうと思います。きっと。